BUTTER


『BUTTER』(柚木麻子/新潮文庫)

 👉#橙色の処方箋

「人に翻弄されている時に寄り添う」


 ✨ 効能

橙色のように疲れを癒し思考力を向上させる


 📖 名言

「彼らの主張は、すべて想像の域を出ていないのだ。彼らの激しい言葉に怯える必要も、胸を痛める必要もない。」


 📖 あらすじ・感想

男たちの財産を奪い殺害した梶井真奈子こと通称カジマナ。
週刊誌記者の町田里佳は彼女と面会し、梶井の命じる〈あること〉をきっかけに、自らの内面や周囲の運命まで変わっていく。フィクションを下敷きにした社会派長編。

誰かの心無い言葉に傷ついたり、自分の心無い言葉に後悔したことありませんか?

 本文にはこんな言葉がある。 

「自分が考えた名もなきものが、色や形を変えながら、世界に波紋のように広がっていけばいい」 


心の変化は、身体の変化を生み、やがて人間関係や周りの環境にも少しずつ影響を与えていく。変化には、嬉しいこともあれば、嬉しくないこともある。 どちらにしても始まりは心の中だろう。


カジマナに翻弄されながらも、「後悔はあるけれど、必要な経験だった」と里佳は語る。カジマナがたどった道を再現しつづける里佳をみているうちに、同じように感じ経験しながら、なぜ運命は分かれていったのだろう、と考えずにはいられななかった。 

その答えのひとつが、本音とどう向き合うかの違いなのではないだろうか。


カジマナは欲望には正直だ。でも、自分の本音には向き合っていないように見える。

ーなぜ男性との関係にこだわるのか。
ーなぜ女性を避けるのか。
ーなぜ料理教室に執着するのか。

彼女にとって「なぜ」は、あえて見ない方が楽だったのかもしれない。 でももし彼女の怒りを自分自身の「なぜ」に向けられていたら、少し違っていたのかもしれない。

 一方で里佳は、記者として常に本質を見つめる。見たくないものも受け入れ、現実をそのまま知ろうとする。この違いが、二人の歩む道を分けたのだろう。 

欲望と本音――似ているようで、実は大きく違う。 本音には真実がある。欲望には、時に偽りも混じる。

 本文に出てくる言葉が印象に残った。 

「アッラーは、あなたがたに易きを求め、困難を求めない」

神が望むのは、きっと難しい試練ではなく、もっと簡単なこと。穏やかで自然な喜びなのだろう。そこにこそ本音と真実が隠されているのかもしれない。


人に翻弄されているときにこそ、そっと手に取りたい一冊です。


 📖 魔法の質問 

あなたが大切にしたい本音は何ですか 


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